試験合格の最短ルートは過去問にあります。日本語教育能力検定試験では似た問題が繰り返し出題されるからです。過去問を解きながらその周辺分野を学ぶことが望ましいです。
そこでこのブログでは、勉強を始めたばかりの方でも過去問に取り掛かれるよう、基本からの解説を心がけました。また、問題を解くには直接関係のない応用部分も説明していますので、知識がなくても過去問を一つずつ解きながら、その周辺分野まで学ぶことができます。もし、解説に異議あり! などございましたら、お気軽にコメントいただければ幸いです。誤字・脱字等のご連絡もいただけると嬉しいです。
目次
- 日本語教育能力検定試験は音声記号で始まります。
- 子音の見分け方
- 母音の見分け方
- 2017日本語教育能力検定試験の予想問題
- 2016日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(1)【調音法】の解説
- 日本語教育能力検定試験の音声記号問題対策におすすめの参考書
日本語教育能力検定試験は音声記号で始まります。
音声記号が大問で扱われた平成25年度を除き、冒頭は毎年音声記号問題です。
平成22年度は【調音点】
冒頭でつまづくと心に傷を負いますので、一覧表や単語カードを使って音声記号を頭に叩き込みましょう。日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第3版であれば、402頁に母音の一覧表が、436頁に子音の一覧表が載っています。
子音の見分け方
子音は、①声帯振動、②調音点、③調音法の3点から分類されます。
①声帯振動
呼気は声帯が頑張ると声になります。声帯が振動すれば有声音、声帯が振動しなければ無声音になります。
②調音点
調音点とは、口の中(口腔内)で呼気を妨害する場所のことです。唇を閉じたり、舌を上顎に近づけたりして、息の流れを邪魔します。
前から順に、両唇、唇歯、歯、歯茎、歯茎硬口蓋、硬口蓋、軟口蓋、声門などがあります。
③調音法
調音法とは、口の中(口腔内)で呼気を妨害する方法のことです。
鼻音、破裂音、摩擦音、破擦音、弾き音などがあります。
鼻音…口の中を調音点で閉鎖し、鼻から息を出します。
例)ナ行[n/ɲ]、マ行[m]
破裂音…口の中を調音点で閉鎖し、その後一気に開放して破裂した音を出します。長くは伸ばせません。
例)パ行[p]、タテト[t]
摩擦音…口の中を調音点で狭めて、隙間から息を出します。
例)サ行[s/ɕ]、ハ行[h/ç/ɸ]
破擦音…字の通り、破裂音+破擦音です。破裂音を出した直後に摩擦音を出します。
例)チ[tɕ]、ツ[ts]、
破擦音は音声記号も破裂音+摩擦音になっています。つまり音声記号が二文字であれば破擦音です。
例)タテト[t]+シ[ɕ]=チ[tɕ]、タテト[t]+サスセソ[s]=ツ[ts]
破裂音+摩擦音=破擦音
破擦音は数が少ないので最初に覚えましょう。
また、破擦音は、一文字目が[t]であれば無声音、一文字目が[d]であれば有声音になります。
例)[ts]→無声音、[dz]→有声音
弾き音…口の中(口腔内)で舌を弾いて音を出します。
弾き音は有声音のみです。日本語ではラ行[ɾ]のみが弾き音になります。
半母音…摩擦音より隙間が広く、すぐ母音になります。
半母音は有声音しかありません。日本語では、ヤ行とワ行です。
子音の音声記号の読み方
①声帯振動②調音点③調音法、の順番です。
例)カキクケコ[k]→無声軟口蓋破裂音
チ[tɕ]→無声歯茎硬口蓋破擦音
母音の見分け方
母音は、④円唇性(えんしんせい)(唇の丸め)、⑤舌の前後位置、⑥舌の高さの3点から分類されます(『日本語教育能力検定試験に合格するための音声23』124頁によると、母音は子音と違い調音器官による気流の妨げが起こらないので、分類法が変わるようです)。
④円唇性(唇の丸め)
丸めありの円唇(オ)と丸めなしの非円唇(ア、イ、ウ、エ)に分けられます。
⑤舌の前後位置
前舌(イ、エ)、真ん中(ア)、後舌(ウ、オ)に分けられます。
⑥舌の高さ
高母音(イ、ウ)、中母音(エ、オ)、低母音(ア)に分けられます。
母音の音声記号の読み方
④円唇性⑤舌の前後位置⑥舌の高さ、の順番です。
ア[a]非円唇低母音
イ[i]非円唇前舌高母音
ウ[ɯ]非円唇後舌高母音
エ[e]非円唇前舌中母音
オ[o/ɔ]円唇後舌中母音
2017日本語教育能力検定試験の予想問題
以上のとおり、音声記号を区別するには、①声帯振動②調音点③調音法④円唇性(唇の丸め)⑤舌の前後位置⑥舌の高さの6通りがあります。このうち、⑤舌の前後位置と⑥舌の高さは、日本語のアイウエオだけでは五肢択一が作れません。④円唇性(唇の丸め)は五肢択一が一つだけ作れますが平成27年度に出題されています。③調音法は平成28年度(2016年)に出題されたばかりです。
よって、平成29年度(2017年)の日本語教育能力検定試験では、①声帯振動あるいは②調音点のいずれかが出題されると予想します。
①声帯振動が出題された場合
声帯振動の有無(有声・無声)の見分け方は簡単です。
清音(カ・サ・タ・ハ行)と半濁音(パ行)が無声音です。
濁音(ガ・ザ・ダ・バ行)と清濁の区別がない子音(ナ・マ・ヤ・ワ行)が有声音。
②調音点が出題された場合
調音点の区別は難しいですが、語呂合わせがあります。
カガワ軟膏、ヒヤ後攻、サザタダナラ死刑。
(カガワ→軟口蓋、ヒヤ→硬口蓋、サザタダナラ→歯茎)
以上の知識をもとに、H28日本語教育能力検定試験の解説をします。
2016日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(1)【調音法】の解説
平成28年度(2016年)日本語教育能力検定試験Ⅰの問題1は例年どおり、他と性質の異なるものの五肢択一です。
1,[ɸ]無声両唇摩擦音
2,[ç]無声硬口蓋摩擦音
3,[s]無声歯茎摩擦音
4,[ɾ]有声歯茎弾き音
5,[θ]無声歯摩擦音
1,2,3,5の調音法は摩擦音ですが、4の調音法は弾き音です。よって、4が正解です。
日本語教育能力検定試験の音声記号問題対策におすすめの参考書

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日本語教育能力検定試験に合格するための音声23は冒頭の音声記号問題はもちろんのこと、試験Ⅱ聴解問題の対策にもなります。特に巻末の国際音声記号表(口腔断面図付き)は試験Ⅱの問題3対策に最適です。私はコピーして机の前に貼っていました。