日本語の音便の種類について学びます。なぜ音便は存在するのでしょうか?
目次
音便とは
音便とは、発音しやすくするために、単語の一部の音がもとの音とは異なった音に変わる現象です。国語学の用語になります。
音便の種類
音便には、撥音便、促音便、イ音便、ウ音便の4種類があります。
撥音便とは
撥音便(はつおんびん)とは、発音しやすくするために、語中・語末の音が撥音(「ん」)に変わる現象です。活用語の連用形語尾「に」「び」「み」の後に「て」「たり」などが続くとき、「に」「び」「み」が「ん」(撥音)に変化します。
撥音便化の例
ナ行・バ行・マ行の1グループ動詞(五段動詞)の連用形(テ形)は語幹末子音が撥音になり、テやタがデやダになります(初級を教える人のための日本語文法ハンドブック351頁より)。
辞書形 古典文法の連用形(テ形) 連用形(テ形)
死ぬ 死にて 死んで
飛ぶ 飛びて 飛んで
噛む 噛みて 噛んで
促音便とは
促音便とは、発音しやすくするために、語中の音が促音(「っ」(小さいつ))に変わる現象です。活用語の連用形語尾「ち」「ひ」「り」の後に「て」「たり」などが続くとき、「ち」「ひ」「り」が「っ」(促音)に変化します。
促音便化の例
タ行・ラ行・ワ行の1グループ動詞(五段動詞)の連用形(テ形)は語幹末子音が促音(「っ」)になります(初級を教える人のための日本語文法ハンドブック350頁より)。
辞書形 古典の連用形(テ形) 連用形(テ形)
待つ 待ちて 待って
狂う 狂ひて 狂って
降る 降りて 降って
イ音便とは
イ音便とは、発音しやすくするために、「き」「ぎ」「し」「り」の子音(k,g,s,r)が脱落して「イ」の音になる現象です。一般に用言の活用語尾に現れるものを指しますが、それ以外の場合もあります。
イ音便の例
・動詞の連用形のイ音便化
カ行とガ行の1グループ動詞(五段動詞)の連用形は、語幹末子音が脱落します(初級を教える人のための日本語文法ハンドブック350頁より)。
辞書形 古文の連用形(テ形) 連用形(テ形)
聞く 聞きて 聞いて
剥ぐ 剥ぎて 剥いで
・形容詞の連用形のイ音便化
高き→高い
赤き→赤い
美しき→美しい
ウ音便とは
ウ音便とは、発音しやすくするために、語中・語末の「く」「ぐ」「ひ」「び」「み」などが「ウ」の音になる現象です。一般に用言の活用語尾に現れるものをさしますが、それ以外の場合もあります。
ウ音便は古典や関西弁でよく登場しますが、「いもひと→いもうと」など現代標準語に残っているものもあるので要注意。
ウ音便の例
・動詞の連用形(テ形)のウ音便化
「思ひて→思うて」「歌ひて→歌うて」
・形容詞の連用形のウ音便化
「よく→よう」「高く→高う」「早く→早う」「久しく→久しう」
動詞のテ形における「音便」の記述を選べ 2016日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3C(15)の解説
以上の知識をもとに、平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3C(15)を検討します。
1,動詞の語幹末尾の音素が弾き音(ラ行)の場合、前述のとおり、促音便が用いられます。
動詞の語幹末尾の音素が弾き音で促音便が用いられる例)散る→散って
2,動詞の語幹末尾の音素が破擦音(チ・ツ)の場合、前述のとおり、促音便が用いられます。
動詞の語幹末尾の音素が破擦音で促音便が用いられる例)勝つ→勝って
3,動詞の語幹末尾の音素が両唇音(フ・パ行・バ行・マ行)の場合、前述のとおり、撥音便が用いられます。
動詞の語幹末尾の音素が両唇音で撥音便が用いられる例)読む→読んで
4,動詞の語幹末尾の音素が摩擦音(サ行)の場合、促音便は用いられません。
動詞の語幹末尾の音素が摩擦音の例)貸す→貸して○ 貸って☓